車好きの笑顔にあふれた広大な店舗とスポーツカーたち
熊本市北区にある植木インターからほどなく、風光明媚な自然に囲まれた場所に「モータースポーツハシモト」はあります。
広大な店舗敷地には、ところ狭しとスポーツカーが展示されており、取材に突然お邪魔したにもかかわらず、早朝から大勢の車好きのお客さんが遊びにきていて、どなたがスタッフか分からないほどに笑い声にあふれていました。
自由にお客さんと会話したり、開店準備をしたりする賑やかなガレージの奥に、まだ気温の低い寒空の中、寡黙に打ち水をする男性の姿がありました。九州ダート界では知らぬ人はいない、と言われる橋本代表その人であります。初めてお目にかかりましたが、長身ですらっとしていて、渋みのある表情はまるでどこかの俳優のような佇まいを感じます。一見して、優しそうには見えない、どちらかと言えば強面の第一印象は、第一声の挨拶の柔らかな優しい笑顔に、一瞬にして崩れ去りました。随所に垣間見るお客さんやスタッフとのフレンドリーなやりとりからも、橋本代表の親しみやすいキャラクターを感じとることができます。そしてなによりも、このお店や橋本代表のことについて、純粋にいろいろと興味がわいてきました。インタビュー形式でいろんな話を伺います。
MSH橋本代表インタビュー
- プロフィール
- 受賞歴
橋本 和信
モータースポーツハシモト代表者
ダート歴36年、九州地区チャンピオン18回、全日本戦優勝などの経験をもとに、自身が知り尽くし信頼する名車「三菱ランサーエボリューション」の専門店として、国内で大きな評価を得ている。
- 九州地区シリーズチャンピオン18回
- 全日本戦優勝1回
- JAFカップ優勝1回
モータースポーツを始めるきっかけと経緯を教えてください。
「物心ついた時から、とにかくクルマが大好きでしたね。車で競争できるレーサーに憧れました。20歳からモータースポーツを始めていました。」
と子どものような澄んだ瞳で話しはじめた橋本氏。
高校卒業後、整備会社に就職しその後タイヤ卸会社に勤務したのち、35歳で独立。まさに車一筋の半生。その長き道のりを少しずつ、大切に思い出しながら語ってくれました。
橋本氏が、ここまで歩んできた半生をこうして自身の言葉により聞くことができるということに、とても強い興味を抱かせるというか、惹き込むような魅力を放つ、不思議な方だなと感じます。
「昔は、今と違って車くらいしか楽しめる、熱くなれるものがなかったもんなあ」
たしかに今のように、娯楽とエンターテイメントが蔓延した時代ではなく、車というモノが憧れであり、熱狂的ファンというよりは相棒として青春のもう一つのかけがえのない存在だった時代がたしかにあったと筆者も感慨深く思うのでした。
ダートラ、そしてランエボ。
「バイトで行っていたところの整備工場の兄ちゃんがダートラって言うのがあるよって、刷り込みよね。俺はこれをやるんだって。最初にいたのが親みたいな。途中でサーキット走ったり色んなことに手を出したけどダートラだけはやめなかった。というよりやめようと思わなかったですね。」
「レースは今も生きがいです。体が動く限り生涯やっていきます。」
ランエボの魅力とは?
「とにかく速い。これに尽きる。
いろんな車に乗ってきたけどエボは一番速い。
競争するうえで他のレースカーも使用したけど、やっぱりランサーだった。」
ランエボの話題になり、トークの温度が一段も二段も上がった橋本氏。ここまで熱くさせるランサーエボリューションというクルマ。まるで長年連れ添ってきた、あうんの呼吸の親友のようでもあり、どんな時も肌身離さず信頼を寄せるいぶし銀の工具のようでもあり。
とにかくひとつ言えることは、橋本氏にとってランエボが生涯の友である、ということです。そのような存在を持つ氏を、とてもかっこよくそして羨ましく思いつつ。
余談ながらこのトロフィーたち、実は店舗事務所の一番奥に、ひっそりと飾ってあるというよりも片隅に窮屈そうに、居場所なく放ってあったもの。取材時に発見し無理やり引っ張り出して並べたものであります。過去の栄光にはこだわらない、橋本氏らしい一面を垣間見た気がします。
ランエボ専門にしたのはいつですか?
「15年くらい前かなぁ、エボ1エボ2と乗り継いできて、友人から特色のある店が既にあるやん、ランサー専門でいったら?と言われて、たしかにそれもそうだなと思って。」
「やっぱりこれだけ愛着のある車体だし、なによりも乗り手としても知り尽くしているから、誰よりも自信を持って扱える。クルマは買ってもらった後が大切だから、お客さんにも安心してもらえる。それが一番ですね。」
友人の何気ないひと言から、ランエボ専門店への歩みをスタートした橋本氏。
そして独立開業から20年という、浮き沈み激しい中古車販売業界のなかにあり、ほんのわずかの数の店舗でしか、なし得ないこれだけの長き年月に渡り営業を継続することは、並大抵のことではなく賞賛に値することです。
20年やってきて思うことは?
「やってきてよかった。ランエボを通じ、モータースポーツハシモトには本当に長く長く、信頼を寄せていただける、家族と呼べるようなお客さんが大勢いらっしゃる。それが20年の証であり、私たちの誇りでもあります。」
モータースポーツハシモトのこだわりを教えてください。
「まずお客さんとの距離、関係性。これには長年こだわってきました。うちに長く来る人は、身内みたいな感じ。敷居がない。朝から来て夕方までいる。他の店がびっくりする。若くてクルマ好きだけど1人で来れない人が誰かと一緒にきてそのあと入り浸りになっちゃう(笑)」
「お客さんにとって、ことクルマに関しては、一番の存在でありたい。そのためには、いつでも気楽に遊びに来てもらえる距離の店でありたいですね。」
その言葉を裏付けるように、取材中にも開店前から、多くのお客さんがひっきりなしに来店というより遊びに来ていました。常にあふれる笑い声と活気あふれる雰囲気は、モータースポーツハシモトとお客様との長年の素晴らしい関係性を何よりも物語っていました。
モータースポーツハシモトの車輌製作とは?
「その人に合う、無理しない車を。」
「予算はもちろんだけど、とにかく無理してほしくない。長く続けてほしいから。無理して単発で終わっちゃうのは寂しいから。」
いざモータースポーツに惹かれ、その世界に入るとやはりアレもこれもと、車輌にお金を注ぎ込みたい衝動に駆られるものです。しかしそれを抑えながら、お客さんが無理しない範囲で長く楽しんでほしいという橋本氏の本音がひしひしと伝わってきます。車を売る、という商売をしながら、お客さんのことをちゃんとお客さん目線で考える。無理はさせない。そこにモータースポーツハシモトが20年続いていて、これだけ大勢の人たちから慕われている真髄を見た気がしました。
橋本代表が大切にしてることは?
「信用。月並みだけどこれしかない。」
「例えば修理や改造、何をして何をどうしたのか、全部説明するし、全部説明できる。絶対うやむやにしない。値段が高くても、ちゃんとこれをこうしましたと説明できること。」
「実直」。この言葉を無意識に体現している人なんだな、と長いインタビューの中で何度も思いましたが、それは間違いないと確信しました。けっして多くを語らない橋本代表が唯一大事にしている「信用」。
長年積み上げた人の口から発せられるこの言葉の重みは、じわりじわりと説得力を持って筆者の胸に届くのでした。
最後にMSHの今後について聞かせてください。
「みんなが一番心配しているのは、10年後にのこっているのか?
うちは、ランエボの旧車ショップになる。いわゆる旧車の古いイメージではなく、このハイパワー四駆の、ガソリン、税金とか維持費も高くなって、それでもこの音と加速がいいっていう人達を全力で応援できる存在でありたい。もちろん初めての方も安心してできるような環境をこれからも整えていく。安心してランエボとつきあってください。」
力強い、そして説得力に溢れた言葉でした。この言葉に、特に九州のランエボファンはさぞかし安堵することでしょう。
数時間に渡るインタビューの中で、ぐいぐいとランエボはもちろん、モータースポーツハシモトというショップ、そしてなによりも橋本代表の魅力に心酔してしまいました。
筆者もクルマが好きで、これからも楽しんでいきたいと思っていますが、次に買うクルマは絶対スポーツカーにしよう。そしてその車種を愛してやまないお店を選びたいと、クルマ屋さんの選び方のコツを今回おおいに学べました。そして次のスポーツカー「ランエボ」にしたいなあ。
植木町の郊外道路のとある交差点。そこにはキレがいいけど頬に優しく、なんとも気分のいい風が吹き抜けていました。きっと明日もあさっても。
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